2016年9月12日月曜日

『DTPの勉強会 第22回』日本語組版:文芸書に有効な設定と注意点。InDesignとIllustratorの比較。

『DTPの勉強会 第22回』に参加してきました。
今回のテーマは「日本語組版」です。

【セッション1】
初心者向け★InDesignで文芸書本文組版
スピーカー:丸山 邦朋さん(TwitterID:monokano
○内容
 文芸書の本文はどのように組まれているのか、
 どうしてそう組むのか、InDesignではどのように組むのか など

【セッション2】
じゃあIllustratorで274ページ分の
文章ものを組んだらどうなるの?
スピーカー:あさうすさん(TwitterID:assause
      Blog:実験る~む
○内容
 様々な事情により「Illustratorで文章ものを組む」ことに
 なった場合に起こりうる問題の比較・検証 など

【セッション3】
『DTP・印刷なんでも質問コーナー』
○内容
 参加者の方から質問を募り、全員で回答を考える など


【セッション1】「InDesignで文芸書本文組版」は、「本文縦組」に絞った内容となりました。
まずはデジタルの文字、グリフ、文字コードなどについて、「デジタル組版」がどのように成り立っているのか、という説明に始まり、次に「文芸書」の主な設定方法(及び、その理由と詳細)、InDesignの機能「文字組み」の比較などへと進みました。
以下、覚え書きの抜粋です。

「段落」の設定
・「日本語単数行コンポーザー」を選択する
・「ぶら下がり」には、行頭と行末に全角スペースを加える
・「連数字処理」「立組み中の欧文回転」は絶対に使用しない
 (行によって、スカスカにならないようにするため)

「禁則処理」の設定
・「禁則処理」は「追い出し」のみ
・「文芸書」の禁則処理は弱い
  強い禁則が良いとは限らないので、どこまで許容するか
・小さい「っ」が行頭に来てもOK
 (バラバラになる確率が減るため)
・トラッキングでマイナスをかけて無理な調整をしない

「文芸書」特有の設定
・2倍ダーシの扱い
・ルビは基本「モノルビ」の「肩付き」で、二文字で一文字分
 「当て字」や「熟語ルビ」の扱い
・縦組の時の欧文に「Times New Roman」や
 「Adobe Garamond」などの欧文フォントを軽々しく使わない。
 どうしても使用しなければならない場合は、
 文字のグリフを自作するくらいの覚悟が必要

「縦組」の便利な設定
・「!!」は「縦中横」より
 「OpenType機能」の「任意の合字」を使用する
 なるべく手数を減らすのがコツ

ポイントは、「行頭と行末だけでなく中を見る」ということでした。
行によって詰まりすぎていたり空きすぎていると見た目も美しくなく、読みづらさに繫がる怖れがあります。
書籍の中でもとりわけ文芸書はシンプルで、一見ほとんど手を施していないようにも見えますが、読者がスムーズに物語へ没入できるように、細かい配慮と設定がなされています。
※このセッションの詳細は、次号の「+DESIGNING」にも掲載される予定です。


【セッション2】「じゃあIllustratorで274ページ分の文章ものを組んだらどうなるの?」では、「Illustrator」と「InDesign」で同じテキストを使用し、最小限の設定で新書フォーマットのページとして組む、という試みがありました。その際にどのような違いや影響、問題が出るのか、という実例を挙げての検証です。

やはり圧倒的に「InDesign」の方が時間短縮できるし、問題が起きる可能性も低いことがわかりました。
また、「InDesign」と「Illustrator」それぞれの同じ機能を使って組んでも、組み上がったものにかなり差があることもわかりました。「InDesign」は、ゆったりと組まれているのに対し、「Illustrator」は追い込みが効いてかなり詰まっています。

「Illustrator」と「InDesign」の同じ設定で組み出力したもの。Aが「Illustrator」で、Bが「InDesign」。同じ設定にしても「Illustrator」の方が追い込まれすぎている。

ページものの文字組みに強い「InDesign」を使わず、「Illustrator」を使うと、機能が限られてしまうため、どうしても力業で制作することになります。ページもののソフトは、以前は「QuarkXPress」が主流でしたが、「InDesign」に替わり「Illustrator」に近い感覚で使用できる現在、もう「InDesign」以前には戻れないと改めて感じました。


【セッション3】「DTP・印刷なんでも質問コーナー」は、参加者の方から様々な質問があり、それについて会場のわかる方が回答するという面白い内容でした。

いくつか出た質問の中で、特に興味深かったのが、
・「Illustrator」から「InDesign」、
 「InDesign」から「Illustrator」、に
 設定を保持したまま素材を持ってきたい。
・特色の設定がCS5以前とCS6以降で違い困っている。
というものです。
これらのことは私も実務で遭遇したことがありますが、現状としてどちらも明解な解決策は見出せませんでした。それでも現時点での情報を共有していただけるのは有り難いです。
今回もたいへん有意義な勉強会になりました。



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DTPの勉強会【DTPの勉強会第22回】(2016年9月10日開催)

前回参加した『DTPの勉強会』の記事はこちら

2016年5月27日金曜日

『DTPの勉強会 第21回』はじめての印刷入稿のためのデータ作成入門:大切な意思統一。大局的な視座から作業工程を把握する。

『DTPの勉強会 第21回』に参加してきました。
今回のテーマは「はじめての印刷入稿のためのデータ作成入門」です。

★はじめての印刷入稿のためのデータ作成入門
☆スピーカー
【RIP解説】
 ・森脇 恵さん(研友社印刷株式会社・CTP業務課)
  枚葉オフセットメインの印刷会社にてRIP周りの業務を担当。
  Apogee Prepressを運用中。
【データ作成】
 ・尾花 暁さん(あかつき
  出版系のデザイン・DTPをメインとするデザイナー。
  「+DESIGNING」でDTPに関する執筆を担当。
【PDF入稿】
 ・笹川 純一さん(株式会社吉田印刷所
  2000年から印刷通販を始めた時の立ち上げスタッフ。
  入稿データの編集とRIPを担当(当時)。
  DTPサポート情報」というサイトにて情報を発信。

「はじめての」と銘打たれた今回のテーマではありますが、初心者向けというより一歩踏み込んだ印象です。
当日は「データ作成入門」として、以下の3点について「出力側」と「制作者」それぞれの立場から詳細を伺いました。
・RIPで何が行なわれているか
印刷に適した望ましいデータとは?
印刷用のPDFの作り方

最初の森脇さんのセッション「RIP解説編」では、主に出力(RIP)についての説明がありました。
RIPとは「Raster Image Processor」の略称で、分版と網点生成を行う装置です。
必要項目を入力してRIPする実際の業務の手順を、会場から会社のPCに接続して公開して頂きました。これは印刷会社勤務の方以外は、なかなか見る機会がない貴重なデモです。
このような行程への理解が深まると、入稿されたデータを確実に出力するために配慮すべきことに目端がきくようになるかもしれません。

尾花さんのセッション「データ作成編」では、入稿用のデータ制作に関するポイントの説明がありました。
データ制作者が目指すべきは「RIPで出力できるデータ」、つまり「制作者が意図した通りに分版できるデータ」です。
言い換えると、制作行程を通じての「データ制作者」の役割は「データ上で分版指定を行う」ということになります。
「データは分版指定」という視座に立って、「分版プレビュー」「オーバープリントプレビュー」などについて果たすべき仕事を明確にしていく。その説明は興味深いものでした。
また、「PDF互換ファイルを作成」にチェックを入れる、「パッケージ」機能を使う、「プリフライト」の設定カスタマイズなど、データの不備を未然に防ぐための機能の紹介もありました。
それでも、印刷会社ごとに環境が異なるため、「必ず出力できるデータ」そいうのは存在しないそうです。よって「出力できる」というのは、「制作側の出力意図と製版側の出力能力の間で、コンセンサスがとれていること」が重要となります。

笹川さんのセッション「PDF入稿編」では、PDFの種類、正しい変換方法、チェック方法などについて説明がありました。
日本国内では現時点で「PDF/X-1a」「PDF/X-4」が主に使われていて、とりわけ「PDF/X-4」は多く用いられているようです。(出力側が対応しているなら、まず「PDF/X-4」を選ぶといいそうです。)
ただし「PDF/X-1a」と「PDF/X-4」変換の初期設定には問題があり、 そのまま書き出すと印刷事故につながるので注意が必要だそうです。そこで「PDF変換」「Acrobatの出力プレビュー」「Acrobatのプリフライト」などのデモもありました。
万が一、データに不備があった場合は制作者側に戻り、データを修正してから再度PDFに書き出して入稿することになります。そのような無駄を防ぎ、確実なPDF変換設定を用意するためには、やはり入稿予定の印刷会社から「PDF変換設定ファイル(PDFプリセット)」をいただくのが最良のようです。


出力の手引き 2016.1 | Adobe Creative Station
データ制作やPDF入稿の解説が掲載されている『PDF&出力の手引き』を、ダウンロードすることができるサイトです。「出力のためのデータ管理」「安全に出力するための最終確認」「ファイル書き出しとプリント」と大きく3つに分類され、それぞれの詳細を見ることができます。

出力の手引きWeb|株式会社SCREENグラフィックアンドプレシジョンソリューションズ
株式会社SCREENのサイトでも「PDF変換設定ファイル」が用意されています。「EQUIOS印刷ユーティリティ」からダウンロードできます。

PDF変換設定について | 印刷データ作成ガイド - 相談できる印刷通販トクプレ.
今回登壇された笹川さんが立ち上げに関わられた印刷通販サイト「トクプレ」は、入稿に関する詳細がわかりやすく解説されている優れたサイトです。私も今までに利用したことがありますが、このサイトで設定方法を確認するだけで、問題なくPDF入稿での印刷ができました。厳密にこだわるなら本紙校正は外せませんが、納期やコストが優先される場合に印刷通販は便利です。


今回は「コンセンサス」という言葉が繰り返し出てきました。これはクライアント、データ制作者、印刷会社など、全体に関わることですが、とりわけ、データ制作者と印刷会社では、これにかかっていると言っても過言ではないでしょう。最終的な入稿形態や方法は「印刷会社への確認」に尽きると思いますが、
・従来通り、ネイティブデータで入稿
・ギリギリまで修正が入る場合を考慮し、ネイティブデータで入稿
・印刷にかかる時間と予算を削減するためにPDFデータで入稿
・データに不備があった場合の対処法として、
 念のためネイティブデータとPDFデータ両方を入稿
などの選択肢を準備できる事が望ましいでしょう。

私も以前、イベントで使用するパンフレットを制作した際に、ギリギリまで原稿が入らずイベント開催日までの日数がわずかになってしまったことがありました。その時にはPDF入稿で印刷の工程を削減することによって、納期に間に合わせることができました。
PDF入稿はデータ制作者側の負担も大きいですが、制作者側の選択肢が広がったとも考えられます。そして上手く使えば、多少無理なお客様のご要望にも応えられる可能性もあります。今後もその都度最良の方法を選択していけるように、データ制作にまつわる知識や入稿方法など、定期的にチェックしていきたいものです。



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DTPの勉強会【DTPの勉強会第21回】(2016年5月21日開催)

前回参加した『DTPの勉強会』の記事はこちら

以前参加した『INDD 2012 Tokyo』PDF出力の記事はこちら

2016年2月23日火曜日

『DTPの勉強会 第20回』トーンカーブを「設計」しよう:より良い結果を導くために、知っておきたいこと。

『DTPの勉強会 第20回』に参加してきました。
今回のテーマは「トーンカーブを『設計』しよう」です。

★トーンカーブを「設計」しよう
   ~なんとなく操作していた方のためのトーンカーブの基本~
☆スピーカー
 ・村上 良日(やも)さん(TwitterID:yamo74
  レタッチ・印刷ディレクション・撮影・執筆他。
  鰯屋代表。blog: やもめも

○内容
1. Photoshopカラー設定とカラーマネジメント
   Adobe語たっぷりのカラー設定の読み方、設定方法と、
   ディスプレイや周辺環境について。
2. トーンカーブの読み方、操作方法
   カーブの作り方や動かし方について。
   カーブの読み方から、どこに点を打つべきなのか、
   どういうカーブを作ったら良いのかなど。
3. 色調補正に必要な選択範囲、トーンカーブのTIPS
   補正のための選択範囲作成について。
   トーンカーブをうまく使った補正のTIPS紹介。

「トーンカーブ」とは、Photoshopの画像補正機能のひとつで、画像の明るさやコントラストを調整する際に使用するものです。

今回、登壇された村上さんは、写真の専門学校を卒業後に印刷業界に入られた方です。写真と印刷双方の特性を理解されているので、どうすれば「『見た目』がいい感じに印刷、または表示されるか」について、多くの解をお持ちです。
そんな村上さんから、今回の勉強会では周辺環境の準備を始めとする、Photoshopの設定や操作方法まで、詳細な説明がありました。

Photoshopには「色調補正」一つを取っても多様な機能が搭載されており、「どの機能をどの手順で操作するか」によって結果が大きく変わってきます。
例えば、頻繁に使われる補正に「明るさを変える」というものがあります。トーンカーブを使用して明るさを変える手順は下記のようになりますが、「なぜその操作が必要なのか、順番が違うとどうなるのか」など、理解した上で操作したいものです。

■明るさを変える手順
1. カーブ端点を操作する
2. 最初にコントロールポイントを打つ位置を見極める
  柔らかく仕上げたいなら左側を最初に、
  鮮やかにしたいなら右側を最初に打ちます。
  順番が違うと印象もかなり変わります。
3. 明暗別に操作する
  明るめのところと暗めのところを別々に見て補正する。

この操作説明で私が印象に残ったのは、「S字カーブは忘れる」ということです。長年「トーンカーブ」といえば、「S字を作る」というのが定石でした。そのため「S字」にならないと、補正が上手くいっていないような気になったりしていましたが、すべての写真が「S字」にあてはまるとは限りません。その辺りの見極めに印象や感覚は大きく影響されますが、それ自体は自然な思考の流れでしょう。しかし、仕事である限り、感覚以外に知っておかなくてはならない事、他に検討すべき視座が多くあります。

今回の勉強会では、周辺環境の設定から画像の検証、Photoshopの設定と操作など、写真と補正に関するテクニックが網羅されていました。「トーンカーブへの理解を深める」ために、「明るさコントラスト」「レベル補正」「露光量」を、あえて「トーンカーブに置き換えて考えてみる」という興味深いアプローチがあり、RGBをそれぞれ補正して「グレーから肌色を作る」という面白い試みもありました。この方法を使って、グレーで絵を描いて、トーンカーブで色を着けることもできるそうです。

Photoshopの多種多様な機能によって、デザイナーは無数の選択肢を得ましたが、より良い結果を導くために、「どのような方法をどのような手順で進めたらいいのか、どのように考えるのがベストなのか」を身につけて、本能としておく事が重要です。今回の勉強会ではその本能に磨きをかける、非常に重要な視点を数多くいただきました。操作方法や考え方を再検討し、今後の制作にも役立てていきたいと思います。

今回の勉強会で配布されたもの
今回の勉強会で配布されたもの。『+DESIGNING vol.39』に掲載された「トーンカーブを設計しよう!」より、出版社の許可を得て抜粋されたページ。RGBモードで補正する際に使用するカード。「パントン・ライティング・インディケーター・ステッカー」と使用説明書。



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DTPの勉強会【DTPの勉強会第20回】(2016年2月20日開催)

前回参加した『DTPの勉強会』の記事はこちら

2016年2月1日月曜日

グラフィックデザイン事務所『DESIGN+SLIM』:第4回 Webサイトリニューアルのお知らせ


グラフィックデザイン事務所・DESIGN+SLIM・Webデザイン

グラフィックデザイン事務所『DESIGN+SLIM』のWebサイトをリニューアルいたしました。


前回から約2年半ぶりのリニューアルです。
その間にスマートフォンやタブレットの対応を始め、Webサイトの見せ方など、Webを取り巻く環境は大きく変化しました。

それに伴い、視認性や可読性の向上も含めサイト全体を見直し、「レスポンシブデザイン」にも対応しました。
また「Webフォント」も導入しましたので、様々な環境や各種デバイスでも同じデザインでの表示が可能となっています。

前回と同様に「 GRAPHIC DESIGN(グラフィックデザイン)」「 BOOK DESIGN(ブックデザイン)」「 EDITORIAL DESIGN(エディトリアルデザイン)」に加え、制作物をカテゴリー別でもご覧いただけるようになっています。

今回は新たに「 WEB/APP DESIGN(ウェブ/アプリデザイン)」のページも設けました。

新しいサイトにも、ぜひご訪問いただけましたら幸いです。


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2016年1月1日金曜日

2016年を迎えて

2016年 DESIGN+SLIM 年賀状

I wish you a Happy New Year.

2016

あけましておめでとうございます!
旧年中はお世話になりありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

皆さまにとって、2016年が良い年でありますように☆

平成28年 元旦




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