2013年10月9日水曜日

岡山電気軌道の路面電車『MOMO』:インダストリアルデザイナー「水戸岡鋭治」が実現した公共交通機関


水戸岡鋭治デザインの路面電車『MOMO』
岡山市内を走る岡山電気軌道の路面電車に、2002年『MOMO』という水戸岡鋭治さん(インダストリアルデザイナー)デザインの新車両が導入されました。『MOMO』は、次世代の路面電車といわれる「LRV(ライト・レール・ビークル)」で、超低床型のドイツ製台車を使用し、車椅子での乗車も楽にできるようになっています。また、従来の車両に比べてかなり静音でスムーズな走行が可能です。

岡山電気軌道 路面電車『MOMO』車両デザイン
シルバーとコバルトブルーの未来的なデザイン。

『MOMO』は外観・内装、共に非常に考え抜かれてデザインされています。特に内装は、座席やテーブルだけでなくフロアにも天然木が使用されており、従来の電車にないこだわりが見られます。また、広く大きくとった窓からは自然光が入り、明るく開放感に満ちていて、今まで経験したことのない視野が広がっているのが新鮮でした。

岡山電気軌道 路面電車『MOMO』車内デザイン1

岡山電気軌道 路面電車『MOMO』車内デザイン2

岡山電気軌道 路面電車『MOMO』車内デザイン3

岡山電気軌道 路面電車『MOMO』運転席デザイン

水戸岡さんの言葉に、
『公共施設や公共交通機関など、公のものは最高のデザイン、最高の素材でなければならない』
というものがあります。なぜならば、人々は誰もが触れる公共のものからデザインを学び、とりわけ子供たちはそういったものに触れることによって美意識や価値観が作られる、と考えているからです。『MOMO』は、そういう考えをきちんと反映したものになっていました。

もともと『MOMO』導入に至った経緯は、岡山の市民団体「RACDA(路面電車と都市の未来を考える会)」が、中心市街地の空洞化、慢性的な渋滞、多発する自動車事故など、様々な問題を解決するために、岡山県出身のデザイナー・水戸岡さんに依頼したのがきっかけです。

地方都市は、車なしでの生活は考えにくいのですが、欧米の一部都市では、それら都市問題の解決策として、路面電車やバスなどの公共交通機関を復権させている例があります。
例えば、ポートランドには「MAX」という路面電車があります。
「MAX」『MOMO』と同タイプで、ホームと電車の床の高さが同じノンステップ車両です。こちらは車椅子はもちろん、折りたたみ式ではない通常の自転車を持ち込むことも可能です。

超低床型のノンステップ車両『MOMO』
超低床型のノンステップ車両。車椅子での乗車も楽にできる。

地方都市では、学校や職場に最寄り駅がない場合、日常の生活に電車を利用しないことがほとんどですが、『MOMO』の車内では定期的にイベントが行われ、誰でも参加し乗車できる機会を作っています。延伸・環状化の実現には、事業計画や事業資金の調達など、クリアしなければならない問題も多数ありますが、『MOMO』には都市部の公共交通機関としての新たな可能性を感じています。

 ※追記:写真はすべて『MOMO2』です。


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グラフィックデザイン:DESIGN + SLIM